
コンクリート床の油汚れ・レジン残渣への対処|密着不良を防ぐ下処理
コンクリート床のラインがすぐ剥がれる/伸びる/ベタつく原因の多くは、油分・可塑剤・古いレジン(樹脂)残渣。
ここでは現場で使える汚染判定→洗浄/除去→物理処理→含水率/ pH確認→プライマー選定→試験接着までの実務手順をまとめました。
最終更新:
汚染・下地状態の判定
判定①
水はじきテスト
霧吹きで水を落とし、はじく=油分の可能性。均一に濡れれば清浄寄り。
判定②
拭き取り試験
白ウエス+アルカリ洗剤/IPAで拭き、色/黒ずみの移行があるか確認。タイヤ痕・可塑剤移行は黒光りしやすい。
判定③
カッター掻き取り
表層を軽く掻き、柔らかい樹脂層や旧塗膜が連続するなら物理除去の対象。
| 症状 | 主原因の例 | 優先対処 |
|---|---|---|
| 塗膜が手で剥がれる | 油分・可塑剤、含水、旧レジン | 脱脂→研磨/ブラスト→低臭プライマー |
| 乾燥後もベタつく | 可塑剤移行、未硬化レジン | 化学分解→研磨→封止プライマー |
| 斑点剥離 | 点在油染み・局所水分 | スポット脱脂→乾燥→追いシール |
化学的洗浄(脱脂・レジン分解)
まずは油脂・可塑剤・樹脂残渣を化学的に落としてから物理処理に進むと効率的です。
| 用途 | 薬剤の例 | 使い分け | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 一般脱脂 | アルカリ洗浄剤(希釈) | 食用油・鉱物油の乳化に有効。刷毛/デッキブラシで擦り、充分な水洗。 | 乾燥前に塗装しない。排水処理を徹底。 |
| 強力脱脂 | シンナー系・IPA | ピンポイントの頑固な油染み。ウエスで拭き取り。 | 引火・臭気・人体影響に注意。換気と防爆対策。 |
| レジン分解 | 塗膜剥離剤(低臭タイプ) | 旧エポ・ウレタン・MMAの軟化→スクレーパー除去。 | 素地を傷めないタイプを選定。中和・拭き取り必須。 |
| タイヤ痕 | ラバーリムーバー | 可塑剤痕の溶解→拭き取り→温水高圧で洗い流す。 | 塗膜を侵す強溶剤は避ける。 |
酸洗い(酸エッチング)は中和不良や塩類残渣による発泡・白化リスクがあるため、駐車場床では推奨しません。
物理的下処理(研磨・ショットブラスト・温水高圧)
| 工法 | 適用シーン | 仕上がり | ポイント |
|---|---|---|---|
| 温水高圧洗浄(80〜90℃) | 油乳化後のすすぎ、広面積の汚れ | 粉塵少・素地はほぼ不変 | 先に化学脱脂→温水で流すと効率的 |
| ポリッシャー研磨(#60〜#120) | 表層の軽いレジン・汚染 | 平滑寄り | 段差・旧膜厚が大きいと時間がかかる |
| サンダー/グラインダー | 局所的な旧膜・段差・レジン溜まり | 局所粗面(アンカー効果) | 粉塵養生・集塵。縁切れ部はフェザー仕上げ |
| ショットブラスト | 広面積の旧塗膜・レジン完全除去 | 均一な粗面(アンカープロファイル) | 目地・排水勾配を事前確認。粉塵回収徹底 |
| スカリファイ(浅切削) | 厚いレジン層・段差 | 粗面〜目荒し強 | 切削後は研磨で均し、粉塵除去 |
最小限の薬剤+温水高圧→研磨→スポット切削の順で、過剰な薬剤使用を避けるのが安全です。
含水率・pH・環境条件の確認
- 含水率:表面水分計で目安確認。新設コンクリは充分乾燥(一般に28日以上)を基本に、既存は漏水・結露がないか確認。
- pH:洗浄後は中性付近に戻す。アルカリ残りは密着不良・発泡の要因。
- 温湿度:5〜35℃、相対湿度85%以下を目安。夜間結露・朝露は養生で回避。
- ラテンス除去:新設や補修部はミルク状のラテンスを研磨で確実に除去。
プライマー選定と塗装手順
| 下地条件 | 推奨プライマー | 上塗りの例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 乾燥・清浄なコンクリ | エポキシ浸透型 | アクリル樹脂系ライン | コスパ良好。標準的な駐車場に適合 |
| 軽微な油染み履歴 | 溶剤型封止プライマー | アクリル/ウレタン | 封じ切り→乾燥後に上塗り。試験必須 |
| 含水が残る可能性 | 湿潤面対応エポキシ | ウレタン/MMA | 露点離隔を確保。結露は厳禁 |
| 重交通・高耐久要求 | 高付着プライマー | MMA/熱可塑(溶融式) | 臭気対策・換気・火気厳禁を徹底 |
- 化学脱脂 → 温水高圧でリンス → 乾燥
- 研磨/ブラストでアンカー面形成 → 清掃
- 含水・pH・露点確認 → プライマー塗布
- ライン・ピクト施工(面塗り→ピクト→番号の順)
- 養生・開放判定(指触・硬化・すべり係数)
試験接着と品質確認
- クロスカット(碁盤目):テープ剥離で剥がれ率を確認。
- 引張付着(プルオフ):必要に応じ測定。改修現場の検証に有効。
- 試験片施工:本番と同手順で1〜2か所、24h後に評価。
- 摩耗確認:搬入ルートでの試験ラインを先行施工し、1週間の踏車後に観察。
費用レンジと工期の目安(税別)
| 内容 | 目安費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 化学脱脂+温水高圧(100㎡) | ¥40,000〜¥80,000 | 汚染度合いで薬剤量と手間が変動 |
| 研磨(ポリッシャー) | ¥800〜¥1,500/㎡ | 集塵・養生含む概算 |
| ショットブラスト | ¥1,500〜¥2,800/㎡ | 厚膜・旧膜除去に有効 |
| 封止プライマー | ¥400〜¥900/㎡ | 材料+施工の概算 |
※諸経費10%、夜間・土日祝は小計+40%が目安。最終金額は現地確認と試験片の結果で確定します。
よくある質問
油染みが強い場所だけのスポット施工で大丈夫?
スポット対処は可能ですが、周囲に汚染が移っている場合は剥離の境界が不自然になります。汚染範囲を見極め、必要面積をまとめて処理するのが安全です。
酸洗いは有効?
駐車場床では中和不良リスクが高く、推奨しません。機械的目荒し+封止プライマーの方が再現性が高いです。
いつから通行再開できる?
下処理のみの場合は乾燥後すぐ。プライマー+上塗りを行う場合は製品規定に従い、指触乾燥→歩行→車両の順で開放します(目安:数時間〜翌朝)。
下処理込みの最適工法をご提案
汚染状況が分かる写真(全景・近景・濡れテスト)をお送りください。最短当日に概算費用をお返しします。
汚染状況が分かる写真(全景・近景・濡れテスト)をお送りください。最短当日に概算費用をお返しします。


